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2023年12月13日 (水)

SACD: Michael Brecker etc.「TELARC HEADS UP JAZZ AND WORLD MUSIC SACD SAMPLER 7」

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SACD: Michael Brecker etc.「TELARC HEADS UP JAZZ AND WORLD MUSIC SACD SAMPLER 7」
TELARC International SACD-63014 2009年
SACD 5チャンネル/2チャンネル、CD
2023年12月にヤフオク!で購入。540円

懐かしさ ★★★
楽曲 ★★
演奏 ★★★
録音 ★★★★
購入満足度 ★★★

デモンストレーションとかサンプラーは、DVD/SACDの買い始めによく買ったが、やっぱりアルバムで聴きたいよね、という気持ちもあり、安くないと買わない。今回は安かったので買った。送料が別に230円かかったけれども。

5チャンネルである。ジャズをマルチチャンネルで聴けるディスクはあまり持っていないので新鮮だった。異なるアルバムから集めてあるが、違和感なくまとめてあるのは偉い。

トラック1のRandy Brecker with Michael Breckerはブラスの勢いが心地よく、買ってよかった、という気持ちになった。トラック8のMichael Breckerは、EWIを演奏しているところに驚きがあった。パット・メセニーのギターと、どっちがどっちだか今ひとつわからないが。トラック10のSpyro Gyraは、あまり時代に合わせずに自分たちの音楽をしている感じがあり、これも好感が持てた。

トラック11のLadysmith Black Manbazoは、これだけがワールドミュージックであると思うのだが、驚かされた。これだけでも買った価値があった。マルチチャンネルが大変な効力を発揮している。このグループはこれまで知らなかったのでSACDを入手できるか調べたが、私の財布で買うのはなかなか難しいようだ。

ただ、全般としては、2000年超えてからのジャズは聞いていて苦しい、という感想である。時代に合わせつつ前へ進もうとしてみんながんばっているのはわかる。ただ、その必死な頑張りが、聞いていて辛い。時代にさからっているから、努力が実を結ばないのよ。今となっては1曲の時間が長過ぎて、早く終わってくれないかなぁと思ったりする。5分間、まじめに聴いているのがけっこう大変なのだ。正直なところ。

5チャンネルを聴いた後で2チャンネルに切り替えたら、音がつまらなくなって耐えられず、5チャンネルに戻した。

5チャンネル再生ができる方にオススメ。2チャンネルで聴く価値があるかというと、うーむ、である。

H2

2023年12月 8日 (金)

SACD: Alfred Prinz, Friedrich Gulda, Wiener Philharmoniker, Karl Böhm, Claudio Abbado「Mozart: Klarinettenkonzert, Klavierkonzert Nr. 21」

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SACD: Alfred Prinz, Friedrich Gulda, Wiener Philharmoniker, Karl Böhm, Claudio Abbado「Mozart: Klarinettenkonzert, Klavierkonzert Nr. 21」
Deutsche Grammophon 476 7369 1974/1975年
SACD 4チャンネル/CD
2023年12月にヤフオク!で購入。900円

懐かしさ ★★★
楽曲 ★★★
演奏 ★★★
録音 ★★★
購入満足度 ★★★★★

音楽を聴く時間があまり取れなかったり、聴いても感想を書く機が熟さなかったりして、このところ更新がとどこおっていた。昨日届いたこのディスクが感興をそそるもので、久々に書く気になった。

ドイツ・グラモフォンである。いろいろ買収されたらしいが。

買ったのは、900円+送料180円ならいいかな、程度の軽い気持ちである。ザビヌルからグルダにつながっていたので、グルダの演奏は聴いてみたいと思った。

1974年、1975年の収録であることはわかっていたので、2チャンネルステレオかと思っていたが、届いてみたら、SACD層は4チャンネル、それにCD層の2チャンネルが付いたハイブリッドであった。SACD層は、箱の裏面には「5.1」表記があるが、4チャンネルであると思う。2チャンネル音声はSACD層には収録されていないようで、プレーヤー(Oppo BDP-103)で2チャンネル優先の設定にしてもマルチチャンネルになる。CD層は2チャンネルであるが、こちらの音質は、SACD層の4チャンネルを聴いた後に聴くと、かなり荒っぽいものに聞こえる。

4チャンネルを再生できる環境で聴くと、かなり魅力的な音だ。リアがけっこうな音量で鳴るのだが、優しい優雅な音で、うるさく感じられることがない。部屋が音で満たされて心地良い。小音量と大音量の差はほどほどに抑えられており、BGMとしても悪くない。あー、4チャンネル再生用にスピーカーの投資をしてよかったー、と思う。

ただ、このディスクを、2チャンネル再生用のSACDプレーヤーで再生した場合、どのようになるのかは、私にはわからない。前2チャンネルだけが再生されるのかもしれないし、CD層の再生になってしまうのかもしれない。そんなわけで、4チャンネル再生ができる方にオススメ。

1970年代に4チャンネル再生の試みがあったことは、当時子供だった私も知っていた。家に「SQ4チャンネル」をうたったレコードがあったからだ。4チャンネル再生が可能なステレオはなかったので、憧れとして4チャンネルの存在を認識していた。

今になって4チャンネルを聴けるのは、とても嬉しい。

ネット検索していたら、昔の4チャンネルのレコードから音声ファイルを作り、それを4チャンネルにデコードして再生するということをしている人もいるようだ。すごいことを考えるもんだなぁ。

私の場合、ターンテーブルを持っていないので、そこまではできない。4チャンネルのDVD-Audio/SACDを買うくらいで止めておこう。

このディスクの演奏の内容をうんぬんするほどの知識はないが、簡単に言えば、高い水準の演奏であると思う。このレベルの演奏と録音がディスクとして残されているとなると、現在活動している人は大変だろう。昔の方がよかった、と言われかねない。実際、そうかもしれないのだし。

モーツァルトの音楽は、天真爛漫な子供が神様と戯れているような趣がある。若いころの私は、人間の苦悩が感じられない点が親しみにくいと思っていたが、年を取って聴くと、純な美しさが染みる。年は重ねてみるものだなぁと思う。

H2

 

2023年5月20日 (土)

アナログのレコードを聴いて思うこと

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アナログのレコードを久々に聴いた(前回の記事はこちら)。中学生か高校のころに買ってもらったソニーのターンテーブルを、その数年後に姉が買ったパイオニアのミニコンポに接続したセットが実家にあり、そこでDeep Purpleの「BURN」を最初にかけ、次にCarpentersの「Now & Then」、Carpentersの何だったか確認を怠ったLPをかけた。

ターンテーブルの上には盛大にほこりが積もっていたが、まあなんとか再生できた。ぷちぷち言うノイズも、最初は気になったが、徐々に軽減された気がした。

アナログのレコードって、小さい音はさほど小さくないし、大きい音はさほど大きくない。CDに比べると、やはりダイナミックレンジが狭いのかな、と思った。で、それが、リスナーとしては楽だ。大きい音が出過ぎてボリュームつまみを絞ったり、音が聞こえなくてボリュームつまみを上げたりしなくて済む。安心して聴ける。

米国ではアナログレコードの売り上げが音楽CDの枚数を上回った、とかなんとかいう記事を読んだ気がする(時事通信の記事はこちら)。さもありなん。「温かみのあるレトロな音色」(前掲記事)というよりは、「ダイナミックレンジが狭い、楽に聴ける音」と表現した方がよいのではないか、と思ったりする。

一方で、上の写真の「BURN」は1974年のアルバムであるから、今年から数えると49年前のものだ。ほぼ50年を経過したレコードを、今でも再生できるという、その事実には、多少なりとも感動せざるを得ない。懐かしい音である。年配者の懐かし消費というのはけっこうパワーがあると思っていて、レコードにはそれを喚起する力がある。

アナログレコードも、音楽CDも、SACDも、それぞれに良さがある。

H2

2023年3月12日 (日)

SACD: Glenn Gould「Bach: Concerto in F Major "Italian"」

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SACD: Glenn Gould「Bach: Concerto in F Major "Italian"」
Sony Music Entertainment, Inc. SRGR 716 1960年
SACDステレオ2チャンネル
2023年3月にヤフオク!で購入。1300円

懐かしさ ★★★★
楽曲 ★★★★★
演奏 ★★★★★
録音 ★★★★★
購入満足度 ★★★★★

このところ頭に来ることが多く、神経がやられて参っていたところで、このディスクが到着したので再生した。少し元気になれた。

このディスクにおけるグールドの演奏は、自由で楽しく、美しい。もちろん彼なりにいろいろと苦労はしてきたのだろうけれど、それをかき消すほどの、楽しさと喜びがあるように感じる。美しいって、こういうことなんだなぁ、と思う。

グールドのディスクでは、グールドの意向に沿って、テープの切り貼りがされていた、というようなことを聞いたことがある。それも楽しかったのかもしれない。

1960年はアナログのテープとレコードの時代だから、録音段階でも、カッティングの段階でも、しっかりコンプレッション(音量レベル差の圧縮)がかけられていたはずだ。SACDは針飛びを気にする必要はないけれども、マスタリング時にはある程度のコンプレッションがされたのではないだろうか。

聴いた感想としては、うまい具合にコンプレッションがかかっていると思う。再生音量が大きくても小さくてもちゃんと響くし、音量つまみに手を伸ばしたいと思うことがない。BGM的に再生できる。聴き始めれば、内容に引き込まれて40分5秒があっという間だ。で、もう一度再生しようと思う。

名盤のSACD化は、これからもやってほしい。

米国でレコード人気、CDの販売枚数上回る 35年ぶり」という記事を読んだ。2022年の米国でのレコード販売枚数は4100万枚で、CDの販売枚数3300万枚であったという。アナログレコードも悪くはないけれども、パッケージで音を楽しむ人が増えているなら、そうした聞き手向けに、SACDのプロモーションを、ぜひまたやってほしいと思う。

H2

2023年3月10日 (金)

SACD: Ulrich Herkenhoff「Balkan Rhapsody」

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SACD: Ulrich Herkenhoff「Balkan Rhapsody」
Musikproduktion Dieter Oehms GmbH OC 603 2005年
SACD/CDハイブリッド、マルチチャンネル(4ch?)/ステレオ2チャンネル
2023年3月にヤフオク!で購入。790円

懐かしさ ★★★
楽曲 ★★★
演奏 ★★★★
録音 ★★★★★
購入満足度 ★★★★★

マルチチャンネルで音楽を聴くことの至福。こういうのがあるから、SACD購入がやめられないのだよなぁ。

このディスクを買おうと思ったのは、パンフルートの音がどんなものか知りたかったからだ。パンフルートという楽器は、身近で見たことも聞いたこともない。この楽器の印象が強いのは、General MIDI規格にそれがリストされていて、1992年末に買ったローランドSC-33で打ち込みをしていた時に、メロディにその音を使うことが多かったからだ。私にとっては懐かしい音色の一つで、2022年にも手慰みで1曲作ったりした(その音はこちら)。

ただ、本物は全く知らない。それも問題があるので、このディスクを買って聴いてみようと思った。

再生して、「あー、こういう音なんだー」という感動があった。アタックは、遅くも早くもできるのね。尺八に近いかも。

Ulrich Herkenhoffという人は、今回初めて名前を知った。オフィシャルWebサイトはこちら。大したもんだと思う。パンフルートの後ろでは、交響楽団が演奏し、指揮は上岡敏之。上岡氏のWebサイトはこちら。この人も私は初耳で、おー、すごい人がここにもいた、と感じた。

このディスクは、録音が素晴らしい。クラシック音楽はコンサートホールや教会などでの録音が多いが、これは録音スタジオで、パンフルートがまさに、そこで鳴る。音の配置と混ざり方が素晴らしく、マルチチャンネルで音楽を聴く至福を感じる。音量の大小(コンプレッションというべきか)も絶妙で、聞こえなかったりうるさかったりしない。欧州の録音技術ってすごい。

エンジニアが2人いて(録音日が違うからかな)、エンジニアによって音は違う。どちらかというと、トラック1~5、13~25の人の方が好み。

映画音楽では、クラシックのスタジオ録音も時々耳にするんだけど、映画音楽だとやっぱり、映像と組み合わせてナンボ、であり、音楽を単体で楽しむことは難しい。マルチチャンネルで音楽を楽しむ、というのは、やはり、SACDが登場したことで復活した行為であり、その点で、SACDというメディアは高く評価されてよいのではないかと思う。

まあ、マルチチャンネルで音楽を再生するのは、ある程度の設備投資が必要なので、それをする人が多くないのはよくわかっている。

私が少年だった1970年代、レコードの4チャンネル再生というものがあった。それってすごいんだろうなぁ、と憧れたが、親にその環境を整えてくれとは言えなかった。オーディオマニア的な行為だからねぇ。というか、ねだりたいものが他にたくさんあったから、そこまでは言えなかったというべきだろう。

2005年にこんな素敵なディスクが作られて、それが自分の手元に来て、良い音を楽しめていることを、心から嬉しく思う。

H2

2023年2月25日 (土)

SACD: T-SQUARE「REBIRTH」

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SACD: T-SQUARE「REBIRTH」
Orange Lady / T-SQUARE MUSIC ENTERTAINMENT Inc. OLCH 10007~8 2017年
SACD/CDハイブリッド、ステレオ2チャンネル+DVD-Video
2023年2月にヤフオク!で購入。1800円+送料215円

懐かしさ ★★★
楽曲 ★★★★
演奏 ★★★★
録音 ★★★★
購入満足度 ★★★★★

T-SQUAREは、SACDをリリースし続けてくれる、数少ない存在であると思う。T-SQUAREを聴くと、やっぱり、SACDはCDよりいいかも、と思う。わずかな違いであるけれども、やっぱり音がいいと思う。

T-SQUAREのSACDは、できればコンプリートしたいと思っていて、目の前に現れて高くなければ買う。揃えようと思っているわけだから、入手できたというだけで、購入満足度は星5つになる。

プレーヤーにSACDなどのディスクを入れて聞き始め、「あーもう今日はこれはいいや」と思うこともあるし、「この曲を一応最後まで聞いてみようか」「次の曲も聞いてみようか」と思うこともある。今の私は、T-SQUAREだと、けっこう聞き続けることができる。

以前、「Nine Stories」を絶賛したのだが、今回の「REBIRTH」は、amazon.co.jpで試聴して、何だろうこの音は?と思った。SACDが届いてかけた時も、最初はうーむと思った。Nine Storiesはすっきりはっきりした音で明るくて楽しいんだけど、REBIRTHはモコモコと、こもって聞こえた。中低域が大きい。左右の音がつながらない。音が多めで、一つひとつの音がよく聞こえない。

でもそれは、再生音量を上げることで解決した。再生音量を上げたら迫力のある、いい音になった。

どのくらいの音量で再生するか、ターゲットを考えて作っているんだろうと思うけれど、そのターゲット音量が、REBIRTHはNine Storiesよりも高いのだろう。

クレジットを見ると、Nine Storiesはプロデュースが「T-SQUARE & Michael S. Kawai」で、録音とミックスが「Hiroshi Ohsaka」、マスタリングが「Mazen Murad at Metropolis Studio in London, UK」となっている。REBIRTHは、プロデュースが「Mikio Aoki」、録音とミックスが「Tsuyoshi Inoue」となっている。となると、音が違うのは当然だとは思う。

音質の好みでいうと、Nine Storiesなんだよねー。UKマスター、なのがいいのかも?

気に入った曲を一つ挙げるとすれば、「7. TRIP!」である。Leafのゲーム音楽みたいな曲なんだけど、細かいところの作り込みに手練れ感があって、さすがだと思わせる。終わり方もLeafみたい。電子音で堂々とメロディをとってくれることも、とても嬉しい。シンセ弾きにお手本を示してくれているようだ。

で、EWIの次にサックスが出てくると、これがまた、ほっとして嬉しいんだなぁ。

T-SQUARE、これからもがんばってほしい。

H2

2021年12月 2日 (木)

SACD: Rosemary Clooney「White Christmass」

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SACD: Rosemary Clooney「White Christmas」
Concord Records, Inc. SACD-1018-6 1996年(SACD化は2003年)
SACD/CDハイブリッド、サラウンド5.1チャンネル/ステレオ2チャンネル
2021年11月にヤフオク!で購入。1710円

懐かしさ ★★★
楽曲 ★★★★
演奏 ★★★★
録音 ★★★★
購入満足度 ★★★★

今年の12月はこのディスクをかけて過ごす予定である。CD層をリッピングしてメモリーカードに入れ、車でも聴けるようにした。机に座った時は、夜間はステレオ2チャンネルを、昼間はサラウンド5.1チャンネルを聴いている。

5.1チャンネルは、ボーカルがほぼセンターに入っているため、センターを大きくしないとバランスが取れない。うちの再生システムだと、フロントLRがGenelec 1031A、センターがより小さい1029Aなので、1029Aの音量つまみをぐっと右に回さなければならない。

私は1987年から1988年にかけて米国のKansas州に住み、1992年から1993年にかけてMassachusetts州に住んでいた。英語は、全くできないわけではないが、英語の歌詞は部分的にしか聞き取れない。このディスクのブックレットにはRosemary Clooneyの弟であるNick Clooneyが文を寄せているが、その文章も、ジャーナリズムスクール的な技巧を凝らされたものであるため、私には理解できないところがある。

それでも、このディスクには、ハッピーなだけでないアメリカ合衆国のクリスマスが描かれており、大変に切ない。特に、2チャンネルだとひどく切ない。5.1チャンネルで聴くと、音場がゴージャスになるせいか、切なさが、少し緩和されるような気がした。

世の中には、「ジャズ・ボーカル」と呼ばれる音楽ジャンルがあるが、そのディスクを買う気には、あまりなれないでいる。現代の多くのジャズボーカリストが、昔のボーカリストに遠く及ばないと思うからだ。Billie HolidayのCDをかけるといいなぁと思うが、それ以降の人のディスクをかけると、大したことないと思ったりした。

Rosemary Clooneyはすごいね。ぐっと胸をつかまれて、切なくなる。英語が十分にわからなくても来る。

クリスマスにかけるディスクとしてこれまで一番に挙げていたのはCarpentarsのものだ。米国の華やかさと幸せが詰まったディスクである。Rosemary CrooneyのWhite Christmasは、ちょっとハスキーなRosemaryの声が、華やかさと幸せに、ちょっとした苦みを加えてくれる。美しい。

彼女は1928年5月生まれだから、この録音をした1996年4月には67歳であったろう。その年齢に達して出せた音だと感じる。

12月をひたすらハッピーに過ごしたいならお薦めしないけれど、そうでなければ、棚に並べる価値のあるディスクだと思う。ぜひ。

下のリンクは、SACDのものである。

H2

2021年11月26日 (金)

Roland UA-S10のCD音質に驚く

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このところ、2枚音楽CDを購入した。届いてOppo Digital BDP-103で再生して、音が良くないことに驚いた。これまで持っていたWAVデータと同じ曲があり、パソコンからUA-S10で出力した音に慣れていたのだが、同じ曲が入ったCDをBDP-103で聴くとぱっとしないのだ。

UA-S10のコントロールパネル(上図)の右上端には「1bit」というボタンがあり、2チャンネル再生時には、原則そこをオンにして使う。CD由来の44.1kHz、16ビット、2チャンネルのデータは、UA-S10の機構によって1ビット化されて再生される、らしい。で、その方が、BDP-103でCDを再生するのより音が良い。

音楽CDはリッピングして聴くべきだということか。うーむ。

SACDは、BDP-103でも十分良い音がすると思う。DSDデータをUA-S10で再生する際は、もともと1ビットデータなので、1ビット化の処理は行われないはずだ。

これまで、BDP-103で音楽CDを再生することは、あまりなかった。

オーディオの世界は大変だわ。

H2

 

2021年11月 4日 (木)

SACD: 辛島文雄&ケイ赤城(Fumio Karashima & Kei Akagi)「グランド・ニュー・タッチ(GRAND NEW TOUCH)」

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SACD: 辛島文雄&ケイ赤城(Fumio Karashima & Kei Akagi)「グランド・ニュー・タッチ(GRAND NEW TOUCH)」
Pit Inn Music Inc. VAGM-1001 2003年
SACD/CDハイブリッド、ステレオ2チャンネル
2021年10月にヤフオク!で購入。1211円

懐かしさ ★★★
楽曲 ★★★
演奏 ★★★
録音 ★★★★
購入満足度 ★★★

SACDなどのハイレゾ・ディスクを時々購入する。オークションでは、買うタイミングを自由にできないので、複数のディスクが同時に家に届くことがある。SACDプレーヤーにかけてSACDとして再生できることを確かめて、棚にしまう。今回は、複数届いたディスクの中で最後にかけたのがこの「GRAND NEW TOUCH」で、そのまま聴き続けた。私にとっては、引き込まれるディスクであったということだ。

トラック1「Someday My Prince Will Come」、トラック3「Autumn Leaves(枯葉)」、トラック5「Summertime」はピアノ二重奏で、トラック2「Playroom」はケイ赤城のオリジナルで本人による独奏。トラック4「Tony Williams」は辛島のオリジナルで本人による独奏である。

グランドピアノ2台を向かい合わせ、蓋を取り去る、というのがピアノ二重奏の、ライブにおける一般的なセッティングである。会場で視聴している人にとっては、どちらが何を弾いているのかをある程度目で判断できるから、そのセッティングはさほど問題がないと思う。

ただ、そのセッティングでは2台の音がほぼ同じ位置に定位して混ざるから、それをそのまま録音して音楽ディスクにすると、どの音がどちらの奏者によるものなのか、皆目見当が付かないことになりかねない。

このディスクの録音をした人は、さすがにそれはまずかろう、ということで、ピアノのそれぞれに、高音域、低音域を狙ったオンマイクを2本ずつ立てている。ディスクで聴くと、左寄りに辛島のピアノの音が、右寄りに赤城のピアノの音が入っている。ステレオスピーカーのセンターに座って聴くと、どちらのピアノが鳴っているのかを、まあまあ判別できる。この定位は好ましいし、残響の質と量も適度である。ダイナミックレンジも、ほどよく調整されていて、聴きやすい。録音はけっこう良いと思う。

2002年という年に、ジャズピアニストという人がまだ存在していることが嬉しい。解説文は「両者の奏法の基盤となっているのは、バド・パウエルを出発点にセロニアス・モンク、(中略)を経て発展してきたモダン・バップ奏法だ」と記している。私は高校生の時に自分のバンドを組んだが、それはピアノ・トリオであったから、ビバップの影響を受けていないとは言えない。ビバップ的な弾き方はうまくできないし、それを習得しようとして努力したかというと疑問だから、このディスクに出てくるピアノの演奏が好きかというとちょっと首をひねる。とはいうものの、懐かしいことは懐かしい。今でもこういうことをしている人がいるんだなぁ、というのは、私としては嬉しい。辛島と赤城の演奏は確かで華麗で、聴きごたえがある。

というわけで、私は、このディスクを入手できたことを嬉しく思っているし、今後も、再生する機会があるだろうと思っている。

一方で、こんな風だからジャズを聴く人が減ったんだよなぁ、と、暗い気持ちになる1枚でもあった。

Someday My Prince Will ComeとAutumn LeavesとSummertimeのテーマを、冒頭部だけでも口ずさめない人は、このディスクを聴いても、まったく理解できないだろう。モダンジャズの定型として、テーマ→即興→テーマという約束ごとがあるが、トラック1のSomeday My Prince Will Comeの場合、はっきりとテーマが出てくるのは始まって2分後だ。そこまでにもいくつかのシカケがほどこしてあるが、「キンコンカンコン」で微笑むのはジャズの遊びに慣れていないと難しいだろうし、ベースの同音反復はMiles Davisの演奏(ディスク紹介はこちら)が本歌であるのだけれど、それは、本歌を知らないとわからない。

Tony Williams(写真はこちら)だって、多くの人は、誰なのか知らないだろう。

こんな風に考えると、ここまで聴衆を絞って、音楽って成り立つのか?と思ってしまう。snobbishである。演奏後の拍手に熱さが感じられないのも、仕方ない。

ディスクの解説もすごくて、「デュエットの3曲はいずれもマイルス・デイヴィスにゆかりのスタンダード曲で説明の要はないだろう」だとさ。無知な人は聞くな、と言わんばかりである。やれやれ。

私は幼いころ、ウルトラマンとウルトラセブンのテーマにも興奮したが、スーザやグレンミラーにも、多くのジャズにも興奮した。事前の知識を必要としない、ストレートな音楽の楽しさがそこにはあった。

マイルスはもっとポップだったぜ。

ジャズは、遠い遠いところに来てしまい、そこに付いてきてくれる人は、もはや数えられるほどではなかろうか。

この文章をここまで読んで、それでも「ジャズピアノ好きだから」という人にお薦めする。

H2

2021年10月31日 (日)

SACD: 小沼ようすけ(Yosuke Onuma)「The Best」

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SACD: 小沼ようすけ(Yosuke Onuma)「The Best」
Sony Music Japan International, Inc. SICP 10112 2010年
SACD/CDハイブリッド、ステレオ2チャンネル
2021年10月にヤフオク!で購入。500円

懐かしさ
楽曲 ★★★
演奏 ★★★★
録音 ★★★★★
購入満足度 ★★★★★

なぜこのディスクを買ったかというと、SACDにしては安かったから、であるのだが、再生して音のイキの良さに驚いた。購入したディスクが家に届くと、プレーヤーに入れて再生し、音が出ることを確かめてそのまましまいこむことが多いのだが、このディスクは最後まで通しで聴こうと思った。と言いつつ、このディスクは74分33秒に16曲を盛り込んだ長いもので、用事があって最後まで一気に聞くことはできなかった。

このディスクはそれより前に発表された、2001年の「nu jazz」、2002年「Summer Madness」、2003年「Jazz'n Pop」、2004年「The Three Primary Colors」、2006年「3, 2 & 1」という5つのアルバムから選曲されたベスト盤である。この人のディスクをもっと欲しいなぁ、と思い、それでも重複するアルバムを買うのはためらわれ、とりあえず、重複がない2007年「Beautiful Day」と2010年「Jam Ka」を注文した。それ以降にもアルバムは3点リリースされているが、残念なことに、Jam Kaより後のアルバムはSACDではない。

今書いているこの文章を、書き始めるのは億劫だった。このディスクのどこが良いのか、考えがまとまらなかったからだ。数日間再生を続け、まじめに聴いたり、ふまじめに聴いたりして考えた。

このディスクの一つの魅力は音の良さだ。音量を下げてもまあまあ聴けるけれども、少し音量を上げると素晴らしい。トラック3はギターだけの演奏で始まり、「さー」っとノイズがかぶるのだが、それがリアルで気持ちよい、と感じるほどに、全体として音が良い。SACDだから良いのか、CDで聴いても良いのか、それは試していないので不明。

Wayne Shorterが「ジャズとは何か?」と問われ、「ヘイ、お前にこれができるかい?」であると答えたインタビュー記事を読んだ記憶がある。ジャズに必要なのは、何がしかの自己顕示欲、他の人がやっていないことをやろうという開拓者の気持ち、そしてもちろん、他の人が何をやってきたかを学ぶ何がしかの謙虚さであるということだろう。小沼ようすけがこのディスクで示した音は、しっかりと、ジャズであると思う。それも、このディスクを気に入った理由の一つだ。

トラックごとに違う世界を見せてくれるバリエーションの豊かさも、このディスクの魅力だ。トラック6はWeather Reportの最初の曲「Milky Way」みたいだし、トラック10は絶妙な8ビートのベースが、そっくりそのままとは言わないが、一時期のMiles Davisを連想させる。トラック11は往年のヒット曲で懐かしい。トラックごとに違うものが示されて、楽しく聴ける。

短いフレーズの反復がよく出てくるのも、私としては好きだし、参考になる。今っぽいと感じる。

こういう、宝物を見付けたような嬉しさがあるから、ディスクを買うのをやめられないんだよなぁ。

H2

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